ココロ色2
ん?
「てかお前さ…興味ないのになんで俺の名前知って…」
会話に生じた小さな矛盾に顔をしかめる。
視線が合わないなんてそんなに大きな問題じゃない、と自分を慰めながら。
その質問に彼は答える事なく「そういえばさ」とやんわり別の話題にすり替えた
「ここ、空き教室でしょ。
なのになんでまたこんなところに皐月君はいらっしゃったのよ」
「え、あ、あぁ…飲み物買った帰りにさ、たまたまこの教室が目に入って」
特に理由もなく立ち寄ったのでそんな質問を投げかけられて言いよどんでしまう。
自分が嘘をついているようで少し心は重くなった
だが彼は自分で聞いておきながら「ふぅん」と生返事をしてまた手元の絵の具に目を落とした
そんな彼の心中は分からず。
「つ…つか!お前こそ何でここにいんの?
ここ日本画んとこからかなり離れてるし、なに、やまてぃーと喧嘩でもしたわけ?」
「…やまてぃー?」
「日本画は山内ティーチャーだろ?あの人の笑い声俺のとこまで聞こえてくる」
山内先生は日本画が似合ういかにも古風な先生で、笑い声こそ大きいが、それが心の広さとでもいうかのようにとても優しい。
40代前半にしてはいい意味で老けて見える。ダンディーというやつか。
因みに油絵は海原というなんともいえぬ好青年といった印象を受ける先生だ
いたって真面目で、だがとてもフレンドリーなので油絵専攻問わず生徒に好かれているようだ
誰かが漫画のキャラクターのようだと言っていたが納得できる
油絵に対しての熱意は人一倍あるようで、つい数時間前に油絵画家について力説されたものだ。
そう考えれば山内先生と喧嘩するなんておかしい話か、
そんな結論を今更出したころに小鳥遊は首をかしげて
「あー…ケンカはしてないかなー。やません優しいもん」
そして少し笑った
笑うところを初めて見た気がする。